インタビュー・職人の世界から学ぶ

伝統を受け継ぐことの大切さ、難しさ

畳職人・和田久定利さんの『伝統を受け継ぐことの大切さ、難しさ』から、教師にとっての「伝統」とは何であるかを考えていただきたいと思います。

質問1 和田さんは2代目ということですが、先代からどんなことを教えてもらいましたか?

答え1 インタビューに答える和田さんの写真

親父は、毎日口癖のように、「習うより慣れろ」と言っていました。具体的に何かを教えてくれるわけではないので、わたしは、ただまねることからはじめました。ただ一人前になりたい一心で親父のやっていることを見ていましたね。始めは、ただ見ているだけでした。しかし、だんだんと、自分の中に「見る眼」ができてきて、どこをみて、まねることが必要なのかがわかってきたのです。

また、親父は、とても丁寧に仕事をする人でした。畳の仕事は、ごまかしてやろうと思えば簡単にごまかすことができます。しかし、お客さんが喜んでくれることをなによりの楽しみにして、丁寧に仕事に取り組んでいる親父をみて、わたしも最後まできっちり仕上げていくことにこだわりを持つようになりました。

質問2 畳職人として次の世代に伝えていきたいことは何でしょうか。

答え2

機械化が進む中でも、やはり人にしかできないことはあります。例えば、畳は何年も経つと、へこんだり、厚くなってきたりします。それは人間の手で探っていかないとわからないことで、手で縫って直すことが必要になります。古くなってきたものを直していくのは、機械化が進む中でも、やはり人間の手でしかできないのです。そういう伝統的な技術は次の世代に伝えていきたいと思いますね。

仕事中の和田さんの写真

また、畳の良さも伝えていきたいです。わたしの店は小学校や幼稚園の近くにあるので、よく子どもたちが店の前を通ります。たまに子どもたちから「何のにおい?」と聞かれることがあります。畳のにおいを知らない子どもが増えているのです。そういうときは、やはり使命感にかられます。人々の生活の中で畳の存在が薄れてしまってきているけれど、日本人は畳の良さを感じる心を持っていると思います。ですから、その良さを一人でも多くの人に伝えていきたいと思います。

質問3 伝統を受け継いでいくことの難しさとは、どのようなものですか?

答え3

和室の激減とともに、畳屋の廃業がここ5年で急増しています。畳そのものの良さや認知度も、日本人の中から薄れていっています。昔みたいに職人が一枚一枚手で縫っている畳屋は、今ではごくわずかで、急速に機械化が進んできました。そういった厳しい時代の変化を受けいれながらも、親父から受け継いだ伝統を守るという、そのバランスをとることがとても難しいですね

これからの職人には、先代の残していったものは、きちんと受け継ぎながらも、その技術に加え、さらに今の時代に何か訴えるものを自分の中にもつことが必要になってくると思います。

仕事中の和田さんの写真

努力することは大切ですが、努力だけでは駄目なのです。昔は、努力していることに満足している自分がいました。若い頃からやっていたので、一筋でやっていると周りが見えなくなることがあります。同じことの繰り返しをやっていく中でどうにかなっていたことが、時代の変化とともに、それでは仕事がないという状況になりました。そのときに、自分が工夫しなければならないと思いました。親父から教えてもらったことを必死にやるだけでは駄目だと思い、自分なりの工夫を探し始めたのです。また、外の世界をみるためにも、セミナーにも通うようにもなりました。そうしていくうちに、仕事が少しずつ増えていきました。

伝統を受け継いでいくためには、先代のやっていることをそのまま継承するのではなく、自分なりの工夫を加えていくことが必要なのだと思います。

取材協力
和田工房

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