最近、さまざまな雑誌やテレビで、「Web2.0」という言葉を耳にするように
なってきました。「Web2.0」はインターネットのあり方を大きく変えると言わ
れています。しかし、その実体は何かと聞かれると、正確に答えられる人はあ
まりいないように感じます。今回のコラムでは、この「Web2.0」を取り上げ、
それが一体何なのか、インターネットをどう変えるのか、そして、教育にどの
ような影響を与えるのかを考えていきたいと思います。
まずは、「Web2.0」とは一体何なのか、そのお話から始めたいと思います。
「Web2.0」というとあまり耳慣れないかもしれませんが、「ブログ」であれば
知っているという方も多いのではないでしょうか。「ブログ」は、簡単に更新
できるホームページとして、多くの人が日記などに利用しています。この「ブ
ログ」は、「Web2.0」の一部なのです。
「Web2.0」の大きな特徴として、「リッチなユーザー体験」や「ユーザー参
加」などが挙げられます。「ブログ」の場合には、インターネット上で、ホー
ムページ作成ソフトを使用しているような感覚でホームページが更新できる
「リッチなユーザー体験」を元に、コメントやトラックバックによって「ユー
ザー参加」がなされているということです。
この「Web2.0」がインターネットをどう変えるのか、その方向性を考える上
でおもしろい例となるのが、「Wikipedia」です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/
「Wikipedia」はインターネット上の百科事典ですが、その大きな特徴として、
「Wikipedia」にアクセスできる人は、誰でも自由に記事の内容を編集できる(
「ユーザー参加」)ことがあります。これによって、「Wikipedia」の記事に
は、世界中のさまざまな人がもっている知識を反映させることができ、何か新
しいことが起こるとすぐに記事にすることができます。しかし、その一方で、
勝手に誤った情報が書き込まれたり、正しい情報が書き換えられたりしてしま
う危険性もあります。「Wikipedia」では、このような危険性に対して、参加す
るユーザーが自発的に誤った情報を正し、不正な書き換えを直していくことが
期待されています。
果たしてこのような形で作られる百科事典が、正しい情報を保持できるので
しょうか。「Wikipedia」ができて以来、多くの人々が注目していました。そし
て、最近、その答えとも言える二つの事件が起こりました。
一つは、アメリカの「Wikipedia」で起こった、虚偽記事の投稿事件です。こ
れは、あるアメリカ人の男性が、実在の有名ジャーナリストについて偽の経歴
を「Wikipedia」に投稿したというものです。この記事がジャーナリストへの中
傷となっていたため、これが大きな問題となり、書いた男性が特定されて職を
解雇されるという騒動に発展しました。
もう一つは、有名な科学雑誌『ネイチャー』が、「Wikipedia」の内容は、イ
ギリスの権威ある百科事典『ブリタニカ』と同程度に正確であるという記事を
掲載したという事件です。これは、ブリタニカ側の反論を招き、ネイチャーと
ブリタニカがお互いに主張をぶつけ合うという出来事に発展しました。
これら二つの事件から読み取れることは、「Wikipedia」の二面性です。第一
の事件のように、確かに、虚偽の記事が投稿され、場合によってはそれが個人
への中傷にもなり得るという危険性があります。しかし、他方では、第二の事
件のように、(異論があるとはいえ)科学雑誌に認められるほどの知識の正確
さを有しているという見方もできます。これは、前述の、ユーザーによる自発
的な修正がかなり有効に機能していることを示しています。
さて、それではこの「Wikipedia」のような存在は、教育にどのような影響を
与えうるのでしょうか?
実は、「Wikipedia」では、同様の仕組みによって教科書を作ろうという「W
ikibooks」という試みがなされています。これは、たいへん興味深い試みです
が、本当に教科書として用いることができるのか、そこには留保が必要です。
「Wikipedia」と同様に、この教科書にもある程度の正確さを期待することは
できるでしょうが、常に虚偽の内容に書き換えられる危険性も有しています。
したがって、内容を読む場合には、「これは本当に正しいのだろうか。」とい
う意識を持ち続けなければなりません。
こうした面があるため、小学校や中学校で子どもたちが使用する教材として
用いるのは、やや難しいかもしれません。しかし、小中学校の教員にとっては、
多くの人が関わって記事を作り上げていく場を見ることで、記事を作るとはど
ういうことなのか、ひいては、情報を作るとはどういうことなのかを考えるき
っかけにはなるでしょう。
さまざまなメディアを通して情報が氾濫している現代において、情報とはど
ういうものなのか、その性質について考えるのは非常に重要なことです。イン
ターネットの新しい形を見ることで、情報のあり方について考え直すきっかけ
としてみてはいかがでしょう。
参考
IT用語辞典〜Web2.0特集:Web2.0とは
http://www.sophia-it.com/category/web2.0.jsp
ITmediaニュース:「オープンソースコンテンツ」に品質管理はない
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0512/15/news020.html
ITMedia News:Nature誌、「Wikipediaの記事は取り下げない」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0603/31/news017.html
(続く)
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